君とボク、そして一杯のコーヒー。

サイエンス書「環境問題はなぜウソがまかりとおるのか」  武田邦彦  (2007.4.5)

環境問題はなぜウソがまかり通るのか (Yosensha Paperbacks (024))環境問題はなぜウソがまかり通るのか (Yosensha Paperbacks (024))
(2007/02)
武田 邦彦

商品詳細を見る


評価★★★

 名古屋大の資源材料学教授が書いた、タイトル通り、衝撃的な本。

 みなさんは、昨今の環境問題を声高に訴える人や主張に、偽善的ないかがわしさを感じたことはないだろうか。もしかしてビジネスや政治上の利害関係が絡んでいるのではないかと感じたことはないだろうか。
 わたしも、環境問題の裏には偽善や欺瞞が潜みやすいと過去何度か思ってきた。例えば、本書でも指摘されているが、わたしも同じように「某プリンターメーカーは環境にやさしいインクカートリッジ作っていると言いながら、なぜに使用済みインクカートリッジを再利用する会社を訴えるのだろう」と。あるいは、「水素なんて水に大きな熱を加えてわざわざ取り出す必要があるのに、なぜに水素自動車が持てはやされるのだろう」「なぜバカ高い(つまりそれだけエネルギーを費やした)水素自動車が、環境にやさしいなどと言えるのだろう」と思ったことがある。
 本書は、そうしたわたしの疑問に答えるかのように、現在社会的に是とされている環境問題について、著者は科学者の立場から辛辣な反論を展開している。

 まず、著者がやり玉にあげているのが、ペットボトルリサイクル。
 ペットボトルは大きくて嵩張り、分別回収すれば、そのぶんトラックの燃料費がかかる。加えて、蓋やラベルを外して内部を洗浄しないとリサイクル処理できないが、それにも多くの電気代など、リサイクル処理の前に多くの資源を利用する。しかも、リサイクル材はリサイクル材でしかない。「資源ゴミのペットボトルから元の透明なペットボトルにはならない」(倒産した再生業者)。結果、政府や公的団体は、なんと焼却してもリサイクルと呼ぶことにしているというらしいから、ビックリw。

 そもそも、ペットボトルほかプラスチック類は、リサイクルには適さないため、分別にせずに普通ゴミと一緒に燃やした方がいい。分別すれば、生ゴミ中心の普通ゴミは水分が多くて燃えず、燃やすためには大量の燃料を使うことになるが、石油から出来ているプラスチックがあれば、そのぶん燃料が少なくて済む。仮にペットボトルリサイクルが理念的・経済的に成功しても効果は極めて限定的で、それなら自動車を1000分の1ほど減らした方がいいという。

 同じように、法規制化された家電リサイクルも、昔は自治体に粗大ゴミとして500円ほど払えばよかったのが、今は処理券購入代として3500円ほどかかるのはなぜなのか。結局、廃家電に有用な資源など(貴金属以外には)なく、焼却するよりない。それを「特定再商品化業者」にまかせて民間事業化したために多額の金がかかるようになったという。

 そんなことから、環境先進国のドイツを調べたら、実は、環境後進国といわれる日本に比べて、国民一人当たりの資源消費量がはるかに多いというんだ、これにもビックリ。それはリサイクルしているからだという。

 地球温暖化についても、辛辣だ。
 気温が上昇して北極の水が溶けても海水面が上昇しないのはアルキメデスの原理からも明らかなのに、溶けると水面が上がるという言説が日本では席巻していると怒る。そもそも温暖化は、二酸化炭素など温室効果ガスの影響よりも、太陽の活動や地軸の傾きがもつ影響の方が大きく、本気で食い止めるには「地球用の巨大なエアコン」でもない限り不可能らしい。すなわち、先進国が京都議定書の通りに任務を遂行しても、たいして効果がない。少しばかりの効果を求めて温室効果ガスを減らすとすれば、個人的にガソリンや電気代を節約してもまったく無意味である。なるほど、ガソリン代を節約しても、そのお金で旅行にいけば、利用した飛行機に燃料費がかかっている。ならば、銀行に貯金しても、その金は企業融資に変化し、どっかの会社が自社のビジネス拡大に使用する。つまり、温暖化は(いかがわしい根拠に基づいた理論だが)、食い止めるとすれば、国は個人にガソリンや電気使用を控えるよう促すのではなく、企業に給料を下げさせるw。つまり、個人そして社会全体の、活動という活動をすべて抑え、GDPを下げることにほかならないんだって。それはなんとなく分かる。

 二酸化炭素の排出にしても欺瞞が多く、例えば、新幹線が飛行機に比べて二酸化炭素の排出量がずっと少ないというのは言い過ぎ。確かに、飛行機は飛ぶために多大なエネルギーを使うが、新幹線だってレールや橋という重力維持装置をつくる初期投資がかかり、その維持・補修のためにもエネルギーがかかっているからだという。
 森林の伐採をやめるように訴える団体も間違えていて、実は、樹木は成長するまでは二酸化炭素を吸収するが、成長が止まれば、あとは朽ちて分解され二酸化炭素を発することになる。従って、ある程度成長したら伐採した方が合理的であると。

 温暖化は、平均して2度cの温度上昇。それを食い止めるために莫大な費用を使うよりも、温度上昇に備えて対策を講じた方がずっと効率的だとの結論だが、残念ながらわたしは科学にとっても疎く、検証はもちろん、評価(evaluation?assesement?)もできない。出来る限り批判的に読んだつもりではあるが、それでも本書の方が正しく感じてしまうのは、単にわたしがあまのじゃくな性格だからだろうか。でも、読み物としても面白かった。

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

 

トラックバック