君とボク、そして一杯のコーヒー。

映画「善き人のためのソナタ」  (2007.2.27)

善き人のためのソナタ スタンダード・エディション善き人のためのソナタ スタンダード・エディション
(2007/08/03)
ウルリッヒ・ミューエ

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評価★★★★★

 これが初監督作だという33才の新進気鋭ドイツ人監督による旧東ドイツに関する映画。昨日、なんとアカデミー賞の外国語映画賞を受賞したらしいが、その名に恥じない、切なくも美しい映画。フォトジェニックな俳優はぜんぜん出てこないけど。
 
 1984年の東ベルリン。そうそう、89年に東西を分け隔ててきた壁が崩壊し、世界中にニュースが駆け回った時、私は18才であった。天安門事件やドーハの悲劇w等と並ぶ、学生時代の衝撃的な記憶の一つである。さて1984年は冷戦の只中、当時の東ドイツは、ソ連を軸とする東側諸国(社会主義諸国)の先鋭だった中心国であった。オリンピックでは怖しく強かった。それもおいておいて、旧東ドイツは密告制度をうまく用い、監視によって政治体制を維持する国であった。そう、ゲシュタボを利用したナチス独逸と同じである。
 
 主人公ヴィースラー(なんと実際に監視された経験のある俳優が演じているらしい)は、泣く子も黙る東ドイツ国家保安庁の大尉として学校で生徒に尋問の仕方を教えている。あるとき彼は、上司の大佐からその能力の高さと忠実さを買われ、ある劇作家の生活を監視し、反体制的行動の証拠を挙げる任務を負う。実はその劇作家、大佐の出世の鍵を握る政治家が惚れた女優と付き合っており、大臣はその女優を我がものにするために監視するよう仕向けていたのだ。
 持ち前の忠実さを武器に寡黙に監視を続ける大尉。しかし、彼の耳に聞こえてくるのは、芸術家たちの自由な思想、豊かで麗しい愛情表現である。徐々に気持ちが揺らぎ始める大尉。劇作家がブレヒトの詩を愛すれば、自らもブレヒトを諳んじ始め、劇作家が女優と奔放なセックスをすれば、自分も娼婦を買う。そして、劇作家が友人に「この曲を本気で聴いたものに悪人はいない」と渡され弾いたピアノソナタの流麗なる音色にも心を奪われてしまう。結局、彼は、劇作家らを捕らえようとする動きに先んじて助けを差しのべようとしてしまう。この映画、とっても面白い映画だけど、何と言っても最後。最後がすばらしく良いんだ。実にホっと癒されるんだなも。絶望の淵に居たはずの大尉も劇作家も、最後には心通わせることができた気がしてホッとするんだ。終わりよければすべて良し。
 
 監督は、レーニンが「ベートーヴェンの情熱のソナタは嫌いだ。聴くと革命をやり通すことができなくなるから」と言ったということを聞いて、今回の映画の着想を得たという。そういや音楽には戦争を止める力があるっていうのは、ジョンレノンや中沢新一も、最近ではオノヨーコも言ってたな。そこで、ソナタとか言えば、詩のように美しき表現になりますね。

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